上司の言うことを聞かない部下の3つの心理
こんにちは、ビジネスメンタルトレーナーの伊庭和高です。
「指示したことをこなしてくれない」
「言うことを聞いているのかわからない」
この様に上司の言うことを聞かない部下に悩んでいる声は多いです。
言うことを聞かなくても優秀な部下もいれば、
言うことを聞かず無能な部下もいるでしょう。
どちらであっても放置していれば仕事に支障が出ますし、
周囲にも良い影響はありません。
自分にだけ心を閉ざしている様に感じたりと、
部下が何を考えているのか気になって仕事に集中できなくなってしまいます。
私はこれまで5000名以上のお客様の相談に乗りましたが、
今回は一般の見地とは異なる独自の視点で、
上司の言うことを聞かない部下の心理背景を解説します。
上司の言うことを聞かないとはどういうことか?
「上司の言うことを聞かない」とひと口に言っても、
具体的にどんな言動を見せるかは部下によって異なります。
・上司の指示に反発する
・その場では従う素振りを見せながら行動が伴わない
・自分を介さず仕事が進められている
言うことを聞かない時に部下が見せる言動は、
大きくこの3つに分けられます。
どれか1つに当てはまることもあれば、
複数の言動を取っているケースもあります。
「自分の部下はどれに当てはまるだろうか?」と考えながら読み進めてください。
上司の指示に反発する
言われたことに反発したり、
反論ばかり並べ立てて来る部下は、
上司の言うことを聞こうとしません。
これは非常にわかりやすいですし、
何かと理由をつけて上司の言うことを聞こうとしていない状態です。
全員の前で反発する部下もいれば、
メールやチャット上で反発する部下もいれば、
個別で話した時に反発する部下もいます。
どの様な形で反発するかは部下によって異なりますが、
たとえ些細なことであっても上司をシャットアウトしている状態です。
その場では従う素振りを見せながら行動が伴わない
上司に言われた時は素直に聞く姿勢を見せながら、
実際には何もしていない部下もいます。
わかりやすく反発する気はないものの、
心の奥では「絶対に言うことを聞かない」という姿勢ができています。
その場を当たり障りなく切り抜けることはできても、
結局は同じ様な指摘を繰り返している場合は、
行動が伴わない部下かもしれません。
そもそも行動を伴わせる気がないので、
上司の言うことを聞く姿勢だけ見せ実態が伴わない状態だと言えます。
自分を介さず仕事が進められている
そして仕事自体は進んでいるものの、
自分の知らない所で話が進んでいるケースもあります。
本来なら自分に相談があって良いものの、
他の上司に相談したりと自分を飛び越えて仕事が進んでいるのです。
成果物は上がって来るので支障はないですが、
自分の言うことは聞かず他の上司の言うことを聞いている様に見えてしまいます。
もしこの様な違和感を抱いた場合、
部下が巧妙に上司の言うことを聞かない状態を作り上げていると言えます。
上司の言うことを聞かない部下の心理背景
上司の言うことを聞かない部下は、
心の中でこの様な気持ちを抱いています。
いずれにしても1つ確かなのは、
いきなり言うことを聞かなくなったわけではないということ。
出会った当初は問題なく関われていたはずなのです。
過去の関わりの積み重ねが影響を与え、
部下が言うことを聞かなくなってしまったのです。
決定的な出来事があった場合もあれば、
上司も自覚していない言動が部下の地雷を踏んでしまった可能性もあります。
上司の粗探しをしている
そして上司の言うことを聞かない部下は、
常に上司をネガティブな目線で見ています。
心理学では確証バイアスと呼ばれていますが、
上司をネガティブな目で見ているからこそ、
何があってもネガティブな目線で捉えようとします。
言うことを聞かなくなってしまった部下は、
「上司の言うことを聞かない自分が正しい」という判断の根拠を日々探そうとしています。
結果として上司の粗探しをする様になるので、
ますます言うことを聞かなくなってしまうのです。
お互いが相手のせいにしているかも?
ここまで部下の心理背景を解説してきましたが、
実は上司も部下も、お互いが相手のせいにしている可能性が高いのです。
お互いが相手のせいにしていれば、
状況が好転するはずがありません。
これは他責思考と呼ばれていますが、
どんな物事にも自分と相手それぞれに振り返る点はあります。
上司の言うことを聞かない部下の心理も、
結局は「上司に原因があるから言うことを聞かないんだ」と思い込んでいるわけです。
一方でそんな部下を見て、
「言うことを聞かない部下に原因があるんだ」と上司が思い込めば、
一向に解決に進んでいきません。
どうすれば現状を変えられるのか?
「では一体、どうすれば現状を変えられるのか?」
「言うことを聞かない部下の扱い方や接し方が知りたい!」
1つ大事なことは、
変えられるものと変えられないものを切り分けて考えることです。
どれだけ相手を変えようとしても、
相手のことを変えることはできません。
相手を思い通りに動かせていれば、
そもそも現時点で部下は上司の言うことを聞く様になっているはずです。
「相手は変えられず、変えられるのは自分だけ」
この考え方は心理学では主流であり、
『嫌われる勇気』が流行した心理学者のアドラーも、
課題の介入という形でこの考え方を説明しています。
つまり部下が言うことを聞かない状況も、
自分自身が変わることで好転する可能性があるのです。
自分の在り方が変われば、
部下に見せる態度も変わります。
そんな自分の態度を見て、
部下の態度にも変化が生まれる可能性があるのです。
「では具体的にどうすれば、自分の在り方を変えられるのか?」
方法を解説します。
自分と相手の原因を振り返る
先ほどお伝えした様に、
部下が言うことを聞かない原因は自分と相手それぞれにあります。
だからこそ、両方の原因を振り返ってみることが大切です。
この様に問いかけてみてください。
ここでのポイントは「どちらか片方の理由ばかり考えないこと」
特に相手に原因を求めがちな時ほど、
「自分は悪くない」という意識が働いてしまいます。
自分の原因を振り返らず、
部下の原因ばかりを振り返っても現状は好転しません。
過去の言動も振り返りながら、
自分と相手それぞれの原因を振り返ってみてください。
合っているかどうかは気にせず、
推測になっても構いませんので、
両方の原因を振り返るうちに現状を客観視できる様になります。
そしてその上で、最終的には自分が部下にどう関わりたいかを導き出してください。
部下が言うことを聞かなかったり、
部下の言動にイライラした時には、
自分と部下の目線で原因を振り返ることを都度行うことで、状況は改善されます。
期待と感謝を伝える
先ほど紹介した方法は非常に効果的ですが、
「自分が取り組むにはハードルが高い」という声も聞きます。
自分の原因をなかなか振り返れなかったり、
色々と考えても答えが出てこなかったりと、
途中で挫折してしまう人もいます。
そんな時には、次の方法を試してみてください。
部下と関わる度に、「期待と感謝」を伝えるのです。
「仕事ぶりには期待しているよ」
「いつも本当によくやってくれてるね」
「仕事が丁寧だから助かってるよ」
「他の人が気づかない所を見てくれるよね」
「いつもありがとう」
この様に部下の仕事ぶりを踏まえた上で、
期待していることと感謝の気持ちを伝えるのです。
心理学ではピグマリオン効果と呼ばれていますが、
人は期待されていると言われるほど期待に応えようとします。
「あなたに期待している」と言葉で伝えることで、
「期待されているんだから頑張ろう」と前向きになるでしょう。
もちろん漠然とした期待を伝えるのではなく、
具体的な期待を伝えることが大切です。
何に期待しているのかであったり、
今までの仕事ぶりから期待することを伝えたりと、
具体的に期待を伝えるほど部下のモチベーションも上がります。
「自分は評価されているんだな」
「気にかけてもらえているんだな」
こうした気持ちが部下に芽生えるほど、
次第に言うことを聞かない状況は改善されます。
またその際には感謝の気持ちもセット伝えましょう。
感謝の気持ちを伝えられて、
嫌な気分になる人は基本的にいません。
言うことを聞かない部下に対しては、
無意識のうちに感謝の言葉を伝えるのを忘れてしまうこともあります。
また最近の研究では、
感謝はお互いの幸福感を高めるとも証明されています。
感謝の気持ちを積極的に伝えることは、
より良い関係性を築くポイントでもあります。
大事なのは「習慣化」
ここまでお伝えした方法を実践することで、
部下が言うことを聞かない状況は変えられます。
安易に部下を辞めさせることはできないですし、
部下(相手)を変えても自分が変わらないと、
新たな部下も言うことを聞かなくなってしまいます。
だからこそ先ほど紹介した方法で、
まず自分が変わることに集中する必要があります。
そして何より大事なのが「習慣化」
一度だけ実践しても状況は変わりません。
部下が言うことを聞かない状況は、
これまでの関わり方が習慣になっているからです。
今までの悪い習慣を改め、
部下が言うことを聞く習慣に変えていく必要があります。
ただし多くの人が行動を習慣化できず悩んでいます。
先ほどお伝えした方法を実践しようと思っても、
気づけば以前までの習慣に戻ってしまうのです。
「人はその日に学んだことの7割を忘れる」
これは私たち人間の記憶のメカニズムで、
エビングハウスの忘却曲線で証明されています。
だからこそ忘れにくくするためにも、
毎日意識しながら実践する必要があります。
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本日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
このコラムの執筆者
伊庭 和高(いば かずたか)
千葉県千葉市出身。
早稲田大学大学院卒。
教育理論や心理学を学ぶ中で100人にインタビューし、独自のメンタルトレーニング理論を確立。
卒業後は高校で世界史を教えるが、本当に伝えたいことはやはり心のケアであると気づき、2017年に株式会社マイルートプラスを起業し、8年で5,000人以上を指導。
2017年11月に株式会社マイルートプラスを設立。
役職や立場を問わず成果が出ることが評判を呼び、2020年4月に著書『ストレスフリー人間関係』を出版。
増刷しロングセラー中。
2023年10月に三笠書房・王様文庫より『声に出すだけでモヤモヤがすっきりする本〜たった5秒のメンタルケア〜』を出版。
『女性自身』(2023年9月19日号)にて、カラー8ページで特集されるなど、独自のメソッドに注目が集まっている。
「日本の元気は気持ちから!」をミッションにしている。
職場の人間関係や仕事の目標達成について、方法が体系立ててまとめられており、お客様の現状に合ったアプローチを取れることが強み。
また最近では企業研修を実施するなど、活動の幅を広げている。